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97/09/23
第二回
ちょっと昔の日本のロックを
聴いてみませんか?


サニーデイ・サービス


'東京'
(MDCL1303 MIDI)


サニーデイの3人
(裏ジャケから)


かせきさいだー


'かせきさいだー'
(NATURAL204
8704-P)

これはインディーズ盤
現在はメジャー盤
(Toy's Factry/Vap)
が出ています

■なぜ、今、70年代の音楽?

 相変わらず長くてスイマセン(笑)。ウナギイヌにも呆れられてしまった。70年代の日本のロック特集いかがだったでしたか?それでは最後にちょっとまとめを。

 このホームページのレコード紹介文を書く時はいつもそのレコードそのものをガンガンかけながらキーを叩いています。もう今回も70年代サウンド漬け。気がついたら黒い髪が肩まで伸びて、ピッピーの格好をしていました。うそです。ピース!
 とにかくそれくらい集中的に、思い切り聴いてみて感じたのが、これらのサウンドが歌謡ロックやニュー・ミュージックとは明らかに異なる、正真正銘の「ロック」である、ということです。「なんだよ、だからどうしたんだよ」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそれって90年代末の東京、いや日本の音楽シーンに最も欠けているものではないでしょうか?

 私の会社にT君という20代ながら確かな審美眼を持ったロック・ファンの男性がいます。フランク・ザッパの死亡記事を新聞から切り取って会社の机に飾っていたことで知り合った(なんと偶然、彼も私も同じことをしていたのだ!)彼の口癖が「産業ロック」。「あんなの『産業ロック』じゃないスか、ダメですよ!」とズバリと発言する将来有望(仕事ぶりは良く知りませんが、音楽的には)な青年です。うーん、彼の言う通りかもしれないなぁ。私は老化防止のためにTVやFMのカウント・ダウン番組を結構しっかりチェックしているんだけど、上位に位置している曲のほとんど(あえて具体名は出しませんが)から、私はロックを感じない。理由はウマく言えないけれど、感じないものは仕方がない。
 「自分の曖昧な感覚だけでいい加減なことを言うな!」と怒られてしまいそうなんで、もう少し補足すると、ロックにはロックの何とも言えない「ザラッ」とした質感があるんだ。ギターの音色なのか、アレンジなのか、歌詞なのか、もしかしたらその全てか混ざって醸し出されるものなのかもしれないけれど、聴いた瞬間に「おお!これはロックだぜ!」と思わせる何かがある。私やT君にはそれがわかる。
 それを今のシンセ・バリバリのダンス・トラックや、やたらとシャウトするオーバー・プレゼンツの「女性ロック・シンガー」には感じない。「お前、シンセとかダメなんだろう?」だって?とんでもない!私はシンセをアナログ+デジタル+サンプリングと3台も持っているし、クラブでテクノのシャワーを浴びることもある。シンセとか何とか、そういう問題じゃない。何かが決定的に違う、と思う。

 もちろんこれは「わかる/わからない」の自慢話じゃないんだ。僕らの同世代からちょっと下まで、そうだな1970年くらいまでに生まれた人間ならば誰でも、体内に、生理的に持っている感覚なんじゃないかな?幼いころや多感な学生時代に、街に流れていたのがそんな「ホンモノのロック」ばかりだったのだから、自然に体得してしまったんだよ。
 みんなロックが大好きだったし「産業ロック」は(笑っちゃうようなのはそれなりにあったけれど)あまりなかった。うーん、もしかしてホンモノとニセモノの量的な比率が今とは逆だったのかもしれないなぁ....。

■最後は”はっぴいえんど”で!

 なんだか段々に暗い文章になってしまったけれど、悪いニュースばかりじゃない。最近の若手だってイイ奴らはいるのだ。

 例えば’サニーデイ・サービス’。セカンド・アルバム『東京』(96年2月)に収録の「恋におちたら」を初めて聴いたときは鳥肌が立った!土曜日の午後のFMから不意に流れて来たんだけど「え?はっぴいえんどの曲?おかしいなぁ、全曲知っているはずなのに....」と考えているところに「サニーデイ・サービスの新曲『恋におちたら』でした」のナレーション。「ナニ?新曲?今の曲?!」と驚き、部屋を飛び出して脱兎の如くCDショップに駆けつけてしまいましたよ。
 実はその時すでにサニーデイのファースト・アルバム『若者たち』(95年4月)を持っていたのですが、とにかくこの『東京』、なかでも「恋におちたら」の完成度は筆舌に尽くしがたいものがあります。もしかしたら、この一曲を90年代の東京に残すために登場したグループなのでは、とまで思えてしまう(もちろん他の曲も素晴らしいですが)。
 中心人物の曽我部恵一は当時大学生。ホントかよ 、完全に僕らより一世代下だぜ。それでこのサウンド。一体どういう生活をしているんだろう?ちょっとエキセントリックな人らしいけれども、これからも変わらずに頑張ってほしいものです。

 そしてもうひとりがJ-RAPの’かせきさいだあ’こと加藤丈文。「J-RAPが’はっぴいえんど’ってことはナイだろう」と言われそうですが、いや、これこそ’はっぴいえんど’の進化型。アルバム『かせきさいだあ』(95年11月)でははっぴいえんどの名曲の数々をサンプリングして使っていますが、それが理由ではナイ。その描いている世界、特に詞の世界が’はっぴいえんど的’なのだ。サニーデイがサウンド+言葉の「完全はっぴいえんどフォロワァー」だとすると、かせきは「概念のはっぴいえんどフォロウァー」といえるでしょう(なんじゃそりゃ?!)。

 さてさて、70年代の日本のロックを、知らない人にも聴いて欲しいなぁという軽い気持ちから書き始めたこの文章、なんだかとんだ「ロック論」と「はぴいえんど研究」になってしまいましたね。しかしそれほどまでに、あの頃の音は「ロック」であり、かつまたはっぴいえんどは偉大である、ということな〜のだ。

 ムーンライダーズの93年のアルバム『A.O.R.』に「現代の晩年」という大好きな曲があります。壮大な60、70年代ロックを思わせるサウンドもとても気持ちいいのですが、何よりも歌詞が素晴らしい!「十代の半ばには、世の中退屈で/空からだけは横文字が、いつも聞こえてた」(作詩・鈴木慶一)。そう、この感覚なんだ!さっき私が言っていたのは。70年代といわず、つい10年位前まで、街にはホンモノの、ザラっとした、愛すべきロックがいつも流れていたんだけど....。

 でも、どうやら今も−ちょっと数は少なくなったけれど−なくなってはいないようです。これからもそんな流行遅れの恋の唄にあの「質感」を求めて、ビルの谷間を彷徨い歩くことになるんだろうな。




■次回予告■

来日記念「バート・バカラックを愉しむ」

さて次回はガラっと雰囲気を変えて、20世紀最大のポピュラー音楽作曲家
バート・バカラックを特集します
11月末の来日公演に合わせた大研究企画です
世代を超えた名曲の数々をご紹介の予定
ご期待下さい!




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