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98/12/23
第六回
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
ジャズ映画大特集
Jazz on the Screen Vol.1




3 映画ファンだけが知っているジャズメンたち








モ’・ベター・ブルース
mo'better blues (1990 米 カラー 129min.)

 
スタッフ
 

監督
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. . . . . . . スパイク・リー
音楽
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. . . . . . . . ビルー・リー

 
キャスト
 

ブリーク・ギリアム . . . .
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. . デンゼル・ワシントン
ジャイアント . . . . . . . . .
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. . . . . . . スパイク・リー
シャドー・ヘンダーソン .
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ウェズリー・スナイプス
モー・フラットブッシュ . .
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. . . . .ジョン・タトゥーロ
インディゴ・ダウンズ . .
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. . . . . . . . . ジョイ・リー
クラーク・ベンタンコート
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. . シンダ・ウィリアムス

 




■ ブリーク・ギリアム(tp)の成功と終焉

 ブリーク・ギリアム(デンゼル・ワシントン)はまさに新世代プレイヤー、ジャズ界でいうところの「新伝承派」の象徴の様な人物である。物語は1969年のブルックリンから始まる。母親によってトランペットの猛練習をさせられているブリーク。「大金を叩いてトランペットを買ったんだよ!練習をするんだよ!」と叫ぶ母親は、野球をやろうぜと誘いに来たブリークの友人達を追い返してしまう程のモーレツぶりだ。

 そして20年後、ニューヨークのジャズ・クラブに超人的なプレイをしている彼の姿があった。窃盗で放り込まれた少年院で覚えたペット...ではなく、教会の音楽教室で学んだわけでもない。ステージ・ママ的なおかぁちゃんによって人工的に「作られた」ジャズメンなのだ。そのせいか、音楽的には抜群だが、人現関係にトラブルが多い。2人の恋人、小学校の教師であるインディゴ(ジョイ・リー、監督・スパイク・リーの実妹)、歌手志望のクラーク(シンダ・ウイリアズ)の間をフラフラしている。ステージングに関してもどうもしっくり行かない。自らのリーダー・バンド、ブリーク・ギリアム・クインテットはテナー奏者のシャドー(ウェズリー・スナイプス)とのツートップで、個性的な2人は何かと衝突が多い。
 そんな彼の活動を一層ややこしくしているのがマネージャーのジャイアント(スパイク・リー監督自演)だ。ギャンブル狂で借金地獄の彼は生活もルーズなら、クラブのオーナー(ジョン&ニコラス・タトゥーロ兄弟怪演)とのネゴもヘタクソだ。しかし幼なじみのブリークは彼をあくまで仲間として扱う。

 ある日のこと、遂にブリークはインディゴとクラークの区別が付かなくなる(かなりマヌケ)。更に借金取りに責められるジャイアントを庇(かば)い、皮肉にも自分のペットで顔を殴られ唇を切ってしまう。演奏中のクラブから連れ出されるジャイアント、それを見ていながらステージは外せないブリーク。悲鳴の様な壮絶なプレイと、同じ時に裏路地で痛めつけられているジャイアント、この演出はなかなかの見モノであった。
 唇の傷は致命的だった。もうペットを吹くことは出来ず、荒れ果てた部屋で廃人の様に佇むブリーク。その行動は奇怪で、明らかに精神のバランスを崩していた...。

 1年後、愛器を片手に久々にジャズ・クラブに赴くブリーク。ステージでは人気絶頂のシャドーとクラールのバンドが演奏している。かつての仲間を暖かく紹介し、チャンスを与えるシャドーだが、ブルークは吹けなかった。唇に残った深い傷のために高音が出せず、舞台から降りるブリーク。すかさずシャドーがソプラノ・サックスでフォローする。そしてドアマンとなっているジャイアントに自らの楽器を渡し、立ち去って行く。

 只、ペットを吹くためだけに生きて来た様な彼の人生は終わり、結局インディゴに救いを求める。最初は拒んだ彼女だが、最後には受け入れて結婚。ブルックリンのアパートでは、母インディゴが息子"マイルス"にペットを教えるどこかで見た様な光景が繰り広げられている。ラストにはジョン・コルトレーンの言葉「慈悲深い神の心は愛の形で示される、それが至上の愛」が映し出される。
 要は英才教育のために世間知らずに育った若き黒人ジャズメンが、自らの挫折から人間に必要なものは「至上の愛」なのだと気付く、というお話。




The Bleek Gilliam Quintet



Giant & Bleek


■ かいせつとジャズファンの目

 監督・スパイク・リーの紹介から始めよう。ジャズ・ベーシストを父に持ち、ブルックリンに育った彼は単なる映画監督に留まらず、今やブラック・アメリカンのオピニオン・リーダー的存在でもある。デビュー作は'86年の『シーズ・ガッタ・ハブ・イット』だが、日本で話題となったのは'89年の『ドゥ・ザ・ライト・シング』、そしてなんといっても92年の『マルコムX』だろう。
 ある作品では現代の黒人の姿を、またある作品では黒人史とも言うべき物語を、ポップな手法で描き続けている。テリー伊藤に似たチビの黒人、ではあるが、ジム・ジャームッシュなども輩出したニューヨーク大学映画学科卒、メチャメチャインテリなのだ。
 私も目が離せない監督の一人である。代表的な作品はほぼ観ている。地味に上映された最新日本公開作『ゲット・オン・ザ・バス』('96年)も良かったなぁ。

 そんな彼が撮ったジャズ映画がこの『モ’・ベター・ブルース』だ。なるほど、彼らしい。あくまで今の、若き黒人ジャズメンと、それを取り巻く世界を描いており、それが新鮮である。当たり前の様に見えて実はこの視点は貴重なのだ。
 クリント・イーストウッドが監督した『バード』('88・米)も、ベルトラン・タベルニエの『ラウンド・ミッドナイト』('86年・仏)も、黒人ジャズメンを伝説的存在として描き、物語は'50〜'60年代、ジャズ黄金期を舞台としていた。ところがこの作品はデンゼル・ワシントン演ずる1960年生まれの若きトランペッターを主役に据え、1990年代のニューヨークのジャズ・シーン、そして黒人の生活を描いている。「白人監督さんよ、黒人をノスタルジーの道具にしたり、悲劇のヒーローに祭り上げたりしないでくれよな。俺達、こうやって生きてるんだぜ」とでも言ったところか。

 その現代性は面白いが、肝心の物語はサエない、なんて評もあった。ジョシュア・レッドマン(ts)やマルサリス兄弟を知っている私は、彼らが置かれている今のジャズ・シーンが垣間見られたので、ジャズ的にはプラス1点。確かに物語は凡庸なのでマイナス1点。結果、「プラマイ・ゼロ、まぁ、いいかな...」が正直な評価である。まぁ大きな問題はないのでジャズ・ファン、映画ファンともに十分鑑賞に耐える作品であると思う。
 なお音楽はスパイクの父親、ビル・リー(b)とブランフォード・マルサリス(as)が担当。テレンス・ブランチャート(tp)から猛特訓を受けたというワシントンの演奏姿はなかなかの迫力であった。ブランフォードの書き下ろしの他、トレーンやマイルスなどの有名曲、そしてジャズ・ラップが巧みに使われ、タイトかつ深みのある雰囲気に仕上がっていた。

 正直、評価の分かれた作品ではあるが、少なくとも私は白人によって撮られた件の2本よりはしっくり来た(というか、あの2本はちょっと「?」だった)。ま、アメリカ行けば俺も「カラード」だもんな、ブラザー!







ジャズメン
MY IZ DZAHAYA (1983 ソビエト カラー 88min.)

 
スタッフ
 

監督
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. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
. カレン・シャフナザーロフ
音楽
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. . . . .アナトリー・クロール

 
キャスト
 

コースチャ. . . . . .
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. . . イゴール・スクリャール
ステパン. . . . . . .
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. . . . . . . . . . . . . .アレクサンドル・パンクラトフ=チョールヌイ
ジョーラ. . . . . . . .
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ニコライ・アヴェリュシキン
バブーリン. . . . . .
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ピョートル・シチェルバコフ
カーチャ. . . . . . . .
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. . . . . .エレナ・ツィプラコワ

 




■ コースチャ・イワノフ(p)が奏でる'20年代ソビエトのジャズ

 1920年代、革命後のソビエトを舞台にしたジャズ映画である。ストーリーは、危険分子としてシベリアに送られて強制労働...ではなく、なんともほのぼのとしたミュージカル・コメディーであった。

 '20年代中頃、黒海に面した港町・オデッサ。かの『戦艦ポチョムキン』の舞台となったところでもある。この街の音楽学校に学ぶピアニスト、コースチャはアメリカの最新音楽、ジャズに夢中だ。しかし当時のソビエトではジャズは「ブルジョアの手先」をされており、彼は退学させられてしまう。
 情熱止み難きコースチャはメンバーを募り自らの「ジャズ・バンド」を結成する。これからがグっとコメディー仕立てとなる。応募して来たのは辻音楽士のステパン(バンジョー)とジョーラ(ドラム)。しかも仕事は「窃盗団のボスの泥棒生活50周年記念パーティー」だったりする(笑)。おまけに踏み込んで来た警官に泥棒達と一緒に投獄されてしまう。しかしそこで元軍楽隊のサックス吹き、イワンと出会ったりもする。このあたり非常に面白い。
 ところがこのイワンがクセもので、アドリブがさっぱりダメなのだ。いくらやっても「ジャズ」にならない。その後はモスクワに進出し、ソビエト巡業中のキューバ人女性歌手との共演や、美人歌手カーチャとコースチャのロマンスなどを軸に物語は進む。
 ラストは大きな演奏会の開催。リハーサルの途中、アドリブが苦手のバーブリンが突如アドリブを吹き始めて...というところはなかなか良かった。新聞は相変わらず「ブルジョアの手先」と叩くのだが、確か彼らを支援してくれる有力な軍人が現れて成功するのではなかったかな。


' Jazz men '


 1984年の4月、東京・千石の三百人劇場で行われた「ソビエト映画の全貌」という上映会で観た。コミカルだったなぁ。ゲラゲラと笑い声をあげるような面白さではなく、思わず顔がほころぶ、じわっと来る面白さであった。
 当時私は10代で、まだジャズを本格的には聴いていなかった(ロックと映画の日々)のだが、何故観に行ったか...「ソビエトとジャズ」という組み合わせがなんとも気になったのだ。
 音楽、特にジャズには人を狂わせる何かがあると思う。銀河の果ての様な'20年代のソビエトにも、ひとりくらいジャズに狂っている青年がいて、必死にモガいていたんだなぁ、という非常に「サダ・デラ的」「はじジャズ的」な発想が当時すでに芽生えていたのだ。

 そうした歴史の1ページを、ほのぼのとした笑いで包み込んで描いた秀作。マジメな事を書くと、一応ソビエト・ジャズの創始者ともいうべきレオニード・オシポヴィチ・ウチョーソフなる実在のモデルがいた様に記憶する。演奏スタイルはデキシー〜クリオール風、アーヴィング・バーリンの「アレキサンダーズ・ラグタイム・バンド」の他、ジャズ風に編曲されたロシア民謡も演奏されていた。
 すっかりジャズキチになった今、改めて観てみたい作品である。そうそう、サックスのオトッツァンがハゲでデブで、坂田明に似てるクセして、アドリブがわかんなくて、そしてなぜかエバるんだよ(笑)...。






情熱の狂想曲

Young Man With A Horn

1950年 | アメリカ | 112分 | モノクロ

監督 : マイケル・カーティス

音楽 : レイ・ハインドルフ

出演 : カーク・ダグラス | ローレン・バコール

ドリス・デイ | ホーギー・カーマイケル



■ リック・マーティン(tp)をめぐる人間模様

 ニヒルなピアニスト、"スモーク"ことウォーリー・ウォルビーの語りで物語は始まる。「リックは伝説の男だ。みんな話を聞きたがる。今日は特別に話そう」。リックとはリック・マーティン、天才的トランペッターである。

 幼少期のリック、姉と二人全米を転々とし、その姉は男と親しげに出掛けたりして、なにやら怪しい。ひとりぼっちのリックは教会でピアノに触れる。そこに安住の地を得たかに見えたが、「毎晩うるさいぞ」と摘まみ出され、自分の楽器が欲しくなる。
 ボーリング場で必死のバイト。そのボーリング場のとなりがジャズ・クラブで天窓にへばりついて、眠い目をこすりながらデキシーを聴く姿がなんともいえずいい。
 ある日のこと、彼に気付いた黒人トランペッター、アート・ハザードが終演後の店内に彼を招き、リクエストを受けてくれる。ここのやりとりもハートウォーミングかつ音楽的で素晴らしかった。念願かなって楽器を購入、楽器屋にはアートが付いて来てくれた。そして彼からの個人教授を受け、めきめきと腕を上げる。

 成人し一人立ちしたマーティンは、プロのバンドに職を得るが、ここではお仕事のために、譜面通りのダンス音楽を演奏する。しかしアドリブに魅せられた彼はそれをガマン出来ない。自らのサウンドを追求すべく気の合ったピアニスト、スモークと共に脱退。親しくなった専属歌手のジョーとも別れなければならなかった。
 しかし仕事はなく、スモークと二人場末の酒場でギャングに絡まれながら演奏をする。やがてスモークとも別れ、一人でニューヨークへ。そこで人気者になっているジョーに再会。さらにジョーの案内でこの地で人気を博しているアートとも再会する。

 ここで安定した職にありつき人気も得るが、やはり状況は複雑だ。メインで演っているダンス・バンドは依然編曲重視。自由なスタイルを求めて、深夜の「ガルバ」−アートの出演クラブ−でもセッションを続ける。ダンスバンドのリーダーが、アート達の事を「低俗な」というのが気になる。

 ここで転機が訪れる。ジョーが友人のエイミーをマーティンに紹介。2人は結婚するが、生活スタイルや嗜好などですれ違いが多い。リックが「中古屋でやっと見つけたんだ。これを聴いてくれ。世界がひっくり返るぞ」と言ってかけたレコードをエイミーが黙殺、無言でシャワーに立つシーンは我が身を見るようでツライ(苦笑)。
 エイミーとの行き違いから、リックの生活はすさんで行く。そして彼を心配してやって来たアートにまで暴言を吐き、彼を傷つけてしまう。そしてその帰り、アートは車に轢かれて亡くなってしまう。

 アートの死、エイミーとの離婚(暴言連発。イヤな女だよコイツ。別れて正解)からリックは演奏にも支障を来す。スーモクも参加しているジョーのレコーディングで、ソロ・パートのハイノートが出なかったのだ。「もう限界だな」と囁くメンバー達。楽器を叩きつけて泣き崩れるマーティン。そして彼は姿を消した。しばらくのち、行き倒れになっているところを見つかるが、彼は紙袋に入った壊れたトランペットを持っていた。

 担ぎ込まれたアルコール中毒サナトリウムに、スモークとジョーが駆けつけた。「バンドをやろう、君たちと僕と、アートで」とうわごとを発するマーティンだが、彼らの助けで復活、見事なハイノートを聴かせる。

 伝説のコルネット奏者、ビックス・バイダーベックをモデルにした音楽ドラマ。「面白い映画よ〜」というジャズ喫茶のママの言葉と、「ビックス・ファンを失望させた」という故・野口久光氏の言葉の間で、揺れていた(笑)。観たいような、観たくないような。結論、難しいことを考えなければ最高の娯楽映画である。

 アドリブを駆使し、駆使しすぎるがために理解されないというシチュエーションと、飲んだくれてぼろぼろになってしまうというありさまのみがビック・バイダーベックと同じ。そのほかは生い立ちも、サウンドもラストの成功談も全くの創作であった。しかしビックスの再現にこだわらなければ、シナリオの濃さ、役者の魅力ともそれなりの出来だった。

 役者たちが魅力的なのはさすがはハリウッドである。オープニングで登場するのが、いきなり、ホーギー・カーマイケル(ピアニスト兼作曲家。「スター・ダスト」の作者)本人だ。ここではピアニスト、スモーク役。彼の存在がこの映画の質を非常に高めている。
 セリフ廻しや動きもなかなかだし、なによりも本職のピアノのシーンが素晴らしい。手元、身体の動き、あのリズム感は本物でなければ出せなかっただろう。ちょっとした仕種、例えば右手で鍵盤を弾きながら左手でドラムにきっかけを渡すところ(私もよくやる)など、他のどの映画でも見なかったものだ。ついでに言えば会話の途中でマッチをするリズム感も絶妙だった。こういうところを観ると、なんとも嬉しくなってしまうのは自分も楽器を演るからだろうか。

 役者しているミュージシャン、カーマイケルと組んで、逆に"ミュージシャン"を演じている役者がカーク・ダグラス。マイケル・ダグラスの父親である。演奏姿は...まあまあかな。大きく目を剥いたりして、いかにもという場面もあるが、リズム感は悪くない。もちろん芝居の巧さは言う迄もない。
 ちなみにこのころのカークはマイケルそっくりだ。マイケル・ダグラス・ファンの方は是非、チェックされたし。オヤジの方が引き締まった感じがするな。
 そして、ドリス・デイ。数々の名唱、ヒッチコックの『知りすぎていた男』での名演、歌も芝居も文句なしの彼女はここでも魅力的だ(大きな目と上向きの鼻、とがった顎など実はかなりのファンなのだ)。そのドリス(ジョー)がカーク(リック)に紹介し、彼の人生を狂わせていまうのがローレン・バコール。イヤな女を名演。それにしても贅沢な配役だなぁ。

 なんだかフツーの映画紹介になってしまった(笑)。音楽的にはですね、トランペットの指導と好き替えにハリー・ジェイムズが当たっていまして、ダイナミックな音とフレーズは彼ならではのものってなところでしょうか。ドリス・デイのヴォーカルもたっぷりと観られます。

 しかしなによりも素晴らしかったのは、セリフがどれもとても「暖かかった」ことだ。音楽的にも、物語としても。この映画にビックスのことを期待するのは間違いなのかもしれない。ジャズ・ファンよりも、映画ファンとしてお薦めしたい映画。強くお薦めする。






ニューヨーク・ニューヨーク

New York , New York

1977年 | アメリカ | 163分 | カラー

監督 : マーティン・スコセッシ

音楽 : ラルフ・バーンズ

出演 : ロバート・デ・ニーロ | ライザ・ミネリ



■ ジミー・ドイル(ts)とかいう奴の話

 『タクシー・ドライバー』の巨匠・マーティン・スコセッシ監督がジャズを描いたこの作品。オープニングから、困った。第二次大戦が終了し、熱狂に沸くニューヨークの街で、「戦争も終わったんなら、一丁ナオンとリーヤだぜ!」と獲物を狙うジミー・ドイル(デ・ニーロ)は、どうやらテナー吹きらしい。

 ジミー・ドーシー楽団の演奏するダンス・ホールで見つけたサエない歌手フランシー・エヴァンス(ライザ・ミネリ)を口説くが、20分かけてもサッパリだ。で、その20分間をきっちりと、同時進行で観せられる。しかも口説き方がヒドイ。たまらん。
 その後も戦争をネタにした不愉快な詐欺で好き放題。多分あなたは25分目くらいでこれが映画ではなく「拷問」であることに気付くだろう。そしてここまで、ドーシー楽団の「オーパスNo1」がBGM的に流れただけで、ジャズ的なものは全く登場してない。

 30分ごろにデ・ニーロがオーディションを受けてテナーを吹くが、そのころにはジャズも映画も、もうどうでも良くなっている筈だ。
 オーディションの途中、雑なブロウを指摘され経営者とモメ出したデ・ニーロを救うべく、ミネリが突然(本当に唐突に)歌を唄い出す。デ・ニーロがそれにフヤケたオブリガードを付けて無事採用となるのだが...多分、ミネリが歌い出した瞬間に10人中7人はヴィデオを止めるだろう。あとの3人?もうここまでで止めているよ(笑)。

 デ・ニーロのテナーは極めて不自然。そんなに首を横に振ったら、アンブシュアが崩れて音なんか出ねぇぞ。物語はこのあと片方が成功したり、片方が失敗したりするのだが、もう本当にどうでもいい(苦笑)。時間が勿体ない、私は忙しいのだ。
 挙げ句にこの映画、2時間43分ある。レンタル・ヴィデオは2本組だ。こんな映画に3時間近い時間を費やすのならば、内田吐夢監督の超大作『飢餓海峡』(昭和39年・東映、やはり長いが秀作)でも観るべし。三國連太郎を観る眼が変わるし、けなげな左幸子もイイ..むむ、ジャズとは全くカンケーなし。別のコーナーと間違えてしまった。

 この映画、どこを観ても酷評ばかり。唯一褒めていたのが天才美人女子大生作家(当時)椎名桜子センセイだったことをここに記す。









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