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98/04/29
第五回
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
新入生歓迎企画
トーキョー・ジャズ・スポット Vol.1









■ 雨の六本木にチャカの唄声...

 突然ですが、ライヴ・レポートです。今回の特集は原則的に覆面取材、というか「取材」の形はとらずにこっそりとお店に訪れたり、過去の記憶を辿ったりしながら、個人的な感想を書いているんだけなんですが、ここは特別。いや、もう特別も特別、なんと熱演中のヴォーカリスト、チャカさんは当「サダ・デラ」をお読みいただいている数少ないプロ・ミュージシャンのおひとりなんです。というわけで、出演者ご本人のご厚意により、演奏写真、コメントつきの「Chaka at Alfie」、ライヴとライヴ・スペースをまとめてご紹介します。



'Differrent View'
PSY・S (1985)
32DH467 Sony

'80年代の
名盤の一枚

■ ますはチャカさんのご紹介

 さて、まずはチャカさんのご紹介から。御存知の方も多いと思いますが、チャカさんこと安則まみさんが我々の前にど〜んと登場したのは今から13年前のこと。若きシンセ奏者、松浦雅也青年とのデュオ'PSY・S'に於いてでした。'85年11月に発売されたシングル「Brand new menu」はSEIKO・ALBAのTVCMにも使われて、かなりの話題になりましたね。
 アルバムの方も同年5月のデビュー作『Different View』に始まり、翌'86年にセンカンド『PIC-NIC』、さらに翌年には『Mint-Electric』とコンスタントに発表。「電気とミント」、「Lemonの勇気」といったヒット曲を生み出していました。いやー、ハマってました。今書いたCD、12インチ・シングル(アナログ盤)全部持っています。そういえば『Different View』は私が買った初めてのCDじゃなかったかな、確か「サダナリのCD化第一弾」だったような気がします。ともかくそういう時代のことです。TVから録ったヴィデオもあるし、ライヴも行ったし...と、夢中になっていたバンドのメンバーから10年経ってE-メールをもらうなんて思ってもいませんでした。つくづく不思議なモンですね、インターネットって。

 '96年にPSY・Sとしての活動を休止。松浦氏は人気ゲーム「パラッパラッパー」の企画と音楽で再び有名になり、チャカさんは「チャカと昆虫採集」「デリシャス・ヒップ」など独自の音楽活動を繰り広げている...と思ったら「ピアノ・トリオをバックに歌います。私は本当はジャズの人間なんです」とのこと。これまたびっくりした。実に10年ぶりにチャカさんを観に行くと...。


■ チャカさんはジャズの人だった!

 ライヴは4月6日、月曜日の晩でした。場所は六本木のジャズ・クラブ「アルフィー」。ここもちょっと遅めのスタートで8時40分ごろ開演。まずはヴォーカル・レスで西村和彦(p)トリオの演奏からです。そしてこれが良かった!オリジナルのみ、静と動、閑と騒のはっきりした演奏に思わず引き込まれました。
 30分ほどしてチャカさん登場。歌い出したとたんに感じたのは「こりゃこのひとはジャズの人だ。何でまた長らくロックやってたんだ?」ということでした(笑)。もちろんロックのチャカさんが悪いというわけではないのですが、声質、発声、英語も、ジャズにハマりまくってます。

 そうですねぇ、なによりも「サダ・デラ」読者に数多くいらっしゃる”目指せジャズボーカル”の女性の皆さんに是非観て欲しいと思いました。なんたって声がイイ。なんか若いボーカルのひとって「けだるくうたうのよぉん、それがじゃずよぉん〜」みたいな風潮がありますが(個人的にはとても苦手。自分のセッションで何回となくイタイ目に遭っている)ありゃ違いますよ。実際のプロって本当に逞しく歌います。私はマヘリア・ジャクソンやダイナ・ワシントンといったゴスペスの流れを汲むような黒人のヴォーカルが大好きなんですが、彼女達って何か”ゴッドマザー”という感じの迫力と包容力がありますよね。そういうものをチャカさんに感じました。ファンクもやった、ロックで大ホール、屋外もやったというチャカさんゆえ、逞しさは人一倍なのだ。

 お薦めしたい理由はまだある。歌詞の吸収力が素晴らしいかった。何回か歌詞の内容に合わせてちょっとしたアクションが入っていて、それが本当に楽しかった!これまた、皆さん、一所懸命カタカナでべらべらべらと暗記してるみたいですが、それ違うで!どんどん大きな声で歌って、意味も調べたりして、自分のものにせなアカンね!と、ついついつられて関西弁(笑)。
 ピアノ・トリオ+ヴォーカルというと「管楽器がないから彩りに欠けるんだよな」と思っている人もいるでしょう、が、ここは違うぞ!チャカさんのアドリブ・スキャットはほとんどテナーかペットのそれ。なかなかの聴き物でしたが、これは女性ヴォーカルの人も管楽器的なアドリブのセンスを必要とされているということにもなるかな。ちょっと大変ですが...(もっとも管楽器奏者にとっても「脅威」なんですが)。

 西村氏のピアノも良かった。トリオの演奏ではちょっと前衛が入ったりしていたんだけど、歌伴も聴かせる。これは今回の発見だったんですが、「前衛の出来る人の歌伴」ってなかなかダイナミックで面白いもんですね。
 曲は'Bye bye blackbird'、'Wave'といった有名曲から'Don't go away mad'といった渋めのヴォーカルものまでさまざまでした。個人的に嬉しかったのは、フレッド・アステアなどでお馴染みのミュージカル・ナンバー「チーク・トゥ・チーク」でした。♪Heaven,I'm in Heaven...で始まる甘い曲を、ピアノとデュオでたっぷり聴かせてくれました。イイ選曲だねぇ、デュオでやってしまうというアイデアもイカス。ジャンルを跨いだ音楽経験の豊富さがこういうところで発揮されるのだな。

 しかし...まー、おとなしいお客さんでした。ソロの後に拍手もしないしね。実は事前に「本当は大阪のroyal horseでのライブを一番見て欲しい」といわれたんです。チャカさんの出身地である大阪ではかなり盛り上がるらしいけれど、東京のライヴはノリがイマイチらしくて。まったく、東京モン、みんなお行儀良過ぎ、と思ったら、どうやら「お客さんは普段”ロックのチャカ”を聴いている人達で”六本木のジャズ・クラブ”にちょっと緊張していたらしい」ということが判明。それなら私が先導して騒げばよかった(笑)。

 30分程度の休憩を挟んで2セット、終了したのは深夜0時ちょっと前でした。10曲以上歌っているのにチャカさんはまだまだ元気、にこにこしながらメンバーやお店の人、時にはお客さんと談笑していました。ちっこいのにともかくパワフル、まぁパワフルなのはミュージシャンの基本かな?西村さん、山田晃路さん(b)、久米雅之さん(ds)もご苦労様でした。



■ ここでチャカさんにちょっとインタヴュー

 かつてのロック少年サダナリも、すっかりジャズおじさんとなり、ジャズ・クラブなどハイカイしていたところ...チャカさんに再会。しかし謎もあります。ロックの人だと思っていたチャカさんが、なんでまたジャズを?そんな疑問に丁寧にお答えいただきました。サダナリとの一問一答です。
Q1:チャカさんといえば、有名なところではPSY・S、ちょっとしたファンならばその前のアフリカ、最近ではデリヒといったイメージが強いと思います。いずれにしてもロック、ファンク系の方だと思っていたのですが、このalfieや続く吉祥寺SOMETIME等、完全にジャズですよね。正直言って驚きました。元々はジャズを歌いたい方(かた)だったのでしょうか?いったいいつごろからライヴでジャズ・ヴォーカルをやられていたんですか?

A1:元々は親父がジャズメン(ピアノ)でしたので、生まれる前から聴いてました。ジャズが子守歌代わりで「大きくなったらサラ・ヴォーンになるんだなぁ」と訳のわからないことをぼんやりと思っていました。
 初めて人前でスタンダードナンバーを4ビートで唄ったのは18歳の時です。人から誘われてハードロックバンドなどで唄ってましが、そのさまざまなバンド活動で知り合った、ある女性シンガーの代役(トラ)で、大阪のバニーがいるお店で唄いました。スタンダードのレパートリーだけは、ベテランの人なみにあったので、持ち歌では困りませんでしたね。あまり誰も聴いていないようでしたが、本当に嬉しかった。
 それから色々声がかかって、PSY・Sでデビューしてからも時たまやってました。アフリカ活動中もずっとジャズはやってまして、レコードデビューする前の方が、しばらくは収入も多かったのです。わたしはジャズ、ソウル、ロック、歌謡曲、どれを歌う時もあまり違いを感じていません。
Q2:PSY・Sでの活動が一番長く、かつ多忙だったと思います。あのころはジャズ・ヴォーカルとしての活動は「封印」されていたのでしょうか?

A2:PSY・Sの活動は実はあまり多忙ではありませんでした。何故ならライブをしなかったからで〜す。ジャズで生活してた頃はほぼ一日おきぐらいにどこかで唄ってましたし。PSY・Sのレコーディングでは歌唱と時々作詞専門で、それ以外は全て松浦氏がやってまして、ものすごくはっきりした役割分担でした。Secret Gig的にジャズやアフリカライブなどはやってましたよ。
Q3:ジャズ・ライヴのマネージメントも所属事務所であるソニーの方できっちりとやられているのでちょっと驚きました(準プライヴェートな活動かと思ったので)。これから「ジャズのチャカ」を広めて行くお考えなのでしょうか?ライヴのサイクルや、これからのご予定をお教え下さい。

A3:「ジャズのチャカ」は何か展開していきたいと思ってます。 ライヴスケジュールは5/8(金)大阪ロイヤルホース、5/10(日)大阪ロイヤルホース、5/15(金)吉祥寺SOMETIME、6/1(月)パワステイヴェント(アコースティック)、6/20(土)吉祥寺SOMETIME、6/30(土)六本木alfieです。
Q4:ロック系のチャカ・ファンになにかメッセージがあればお願いします。

A4:ロック系ファン、ジャズ、唱歌、ソウル系、どんな聴き方をしてくれても、私は分け隔てなく感謝してます。PSY・Sは松浦氏との出会いで生まれた音楽です。これ以上二人でこれ迄と同じ質の作品を作り続けられないと感じ、私個人としては「体力の限界」という千代の富士関と同じ理由で解散しました。
 それでも私は元PSY ・SのCHAKAであることを誇りに思いますし、またいつか素晴しい誰かとの出会いで別のCHAKAが生まれるかもしれないし、ロック系のCHAKAが蘇ることもあるかもしれません。どの音楽もドレミファソラシドの組み合わせです。いろんなCHAKAを応援してくれると嬉しいな!
 「生でジャズを聴いてみたい、でも勇気もないし、だいたい誰を聴けば...」という方、キマリでしょう。チャカさんならばはじめての人にもわかりやすい、楽しいステージを魅せてくれます。ロックでその名前を御存知の方もいらっしゃいますよね。それならばなおさら抵抗ないのでは?大阪、東京の他、京都「ラグ」などにも出演中です。
 もしライヴに行かれたらチャカさんに「サダ・デラを観てやって来ました」とひとこと声を掛けてみてください。チャカさんもきっと喜ぶし、私も本当に嬉しいです!

 最後に一番オモロかったMC。チャカさんはカギっ子、一人っ子で、留守番をしながら家にころがっていた「1001」を読んで、歌っていたそうです。「1001」(センイチ)とはジャズ・メンのバイブル、約1000曲のスタンダードが収録されているスコア・ブックのこと。「よーわからん曲は適当なメロディー付けて、とにかく全部歌ってた」とのこと。こりゃお見事な育ち方。しかしなるほどそういうジャズとの接し方もあるのかと、マジメに感心もしてしまったのだった。とにかく、自分で、演ってみること。これに尽きるね。







6-2-35 5F
Roppongi Minato-ku

Phone 3479-2037

■ 最後にアルフィーのご紹介

 最後になってしまいましたが、今回全面的にご協力いただいた六本木・アルフィーをご紹介します。

 まず場所が分かりやすいのが助かる(笑)。地下鉄日比谷線六本木駅1番出口から徒歩10秒でエレベーターに辿り着く。一階はパン屋さん「ポンパドール」だ。5階に上がりエレベーターを降りて右(こんなタイトルのフランス映画があったな)、左はカラオケスナックである。間違えてはイケナイ(しかもこんなストーリーだったな)。
 先程ボディー・アンド・ソウルのことを「大きめのレストラン」と書いたけれど、ここはさながらこぢんまりしたレストラン、あるいはバーといった感じ。しかし店内は暗く、楽器もちゃんとセットされてしっかりジャズ・クラブしているのだ。
 嬉しいのは一カ所だけ、ぽかーんと壁に窓があることだ。この窓からまるで風景画のように飯倉、麻布十番あたりの夜景が見える。これがなんともイイ。特に雨の日など切り取られた都会の風景が最高のアクセントになっている。さながら現代の「借景」といった感じか?

 ライヴの時間は先程書いた通り、8時30分ごろからの2セットで終了は0時近く。お店の雰囲気がそうさせるのか、なんともゆったりと時間が流れて行くように感じた。
 なお金曜日の晩は0時以降、5時まで営業。バーとしての営業ということになっているのだが、他店での仕事を終えたジャズ・メン達が夜な夜な集結し、セッションを繰り広げているというウワサも。これは確かめてみなければな。ひとつ朝まで付き合ってみるか?

 予算的にもそれほど心配なし。チャージ\3500、ドリンクは\1000前後、フードも\1000台からある。一杯呑んで、軽くなにかつまんでも\5000〜\6000。この場所で、この雰囲気で、安いよこれは。ちなみに先程書いた金曜深夜0時から5時まではチャージ\700、もう信じられない価格。これは行くしかないな!

 今回はピアノ・トリオ+ヴォーカルでしたが、実はかなりの派手な演奏も演ってます。一管、二管は当たり前。たまに行われる「マンデー・ナイト・オーケストラ」では6管10人編成なんてのも登場する。しかしあの店内で10人?お客さんの座る場所はあるのだろうか(笑)。
 常連は向井滋春(tb)、寺井尚子(vln)、横山達治(perc)などちょっとボディー・アンド・ソウルに似たメンツから、山田穣(as)、川島哲郎(ts,ss)といった若手、益田幹夫(p)、日野元彦(dr)らのヴェテラン勢まで。入門用にもいいお店、だと思います。お薦めです!




map & data

■ 営業は月曜〜土曜、日曜定休
■ 営業時間 7:30p.m.〜
■ 1st set 8:15p.m.〜 2nd set 不定
金曜晩に限り0:00a.m 〜 5:00 a.m.も営業
■ Music Charge \3500〜+1Drink order
■ 予算\5000〜






さて次は六本木と新宿
はずすことの出来ない東京一あの名店です




御存知ですか
レレレのレ
それぞれカラーがあるんです




ジャズ・マナーその3・出来れば二人連れで
 出来れば二人で行った方がいいです。理由はまわりがカップルばっかりなのでミジメな思いをするから...というのはウソで、ソロ客とペア客で通される場所が違うんですよ。
 ひとりの場合は原則的にカウンターですね。ところがこのカウンターというのがだいたい演奏者に対して反対側か真横を向いている。椅子の向きを変えて、更に体をよじって観なければならない。これはツライよ。
 観察の結果、男女ペア客が一番いい席に通される模様。演奏者の正面のテーブル席とかね。店のつくりによって違いはあるが、しっかりしたカウンターのある店ならばまずこうだと思っていい。
 基本的に席は入場時に店の方で振りあてられてしまい、多少空いていてもひとりでカウンター以外というのはまずない。頼んでも断られてしまう。これはルールみたいなもんだからモンクを言わないようにしましょう。

 そうとわかっているのにひとりで行ってるんだよなぁ、俺。行くと必ず0時近く、最後の最後まで観ますからね。連れがいると電車の心配とか色々と面倒で...あぁ、人生捨ててジャズ取ってる(笑)。 


取材にご協力いただいたチャカさんご本人、アルフィ様、ならびに
(株)ソニー・ミュージック・アーティスツ吉川様、山本様に感謝致します

このページは作者・定成寛の個人的感想を記したものです
アルフィーとは全く関係がありません





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