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97/10/04
第二回
入魂企画
はじめてのJAZZ
世界一わかりやすいジャズ入門
’さあ、最初の1枚は?’
お薦めCD23連発




 チッチッチ、俺はちょっとウルサイ・フュージョン・ファン
 俺の気に入るヤツはどれだい?


気分その10 


 「カシオペアとかさ、スクエアとか、ずっと聴いてたんだ。耳は肥えてるぜ。素人扱いはコマルな」はいはい、そうですか。いやー、タチの悪い....いやいや冗談ですよ(笑)、ちょっと手ごわい「初心者」ですね。まあ、こういう方は多いでしょう。なにしろジャパニーズ・フュージョン、めちゃくちゃ人気ありますからね。
 こうした方達の共通点が「バカテクを聴き慣れている」でしょう。信じられないような速弾きギター、手数(てかず)の多いドラムに複雑なコードなど、ムッツカシイことやってるんですよね、最近のフュージョン。ジャズから派生したはずのフュージョンですが、最近は微妙に「似て非なるもの」になっているかもしれないな。結構、ジャズとフュージョンの間の溝ってのは深いものがあるのではないでしょうか。

 しかし、探せば、ありまあす!知る人ぞ知る、玄人好みギタリスト、パット・マルティーノ『ナイトウイングス』('96)は確かなジャズ・スピリッツを感じさせ、かつフュージョン・ファンも納得させるクリエイティヴィティをも兼ね備えています。


"Nightwings"
Pat Martino
(MCD 5552 MUSE)


 それにしても不思議なんだよなぁ、速い!とにかく速いマルティーノのギターなんだけど、速いだけじゃない、どうしようもない程のジャズ臭さも感じさせてくれます。そういった意味では彼のプレイは−とても地味な存在ではあるけれど−現代ジャズのひとつの進化形、いや、到達点ともいえるのではないかな。

マルティノ近影

'97年春の来日は
健康上の理由で
中止になってしまった
ちょっと心配
 またこのアルバム誕生の裏にはこんなエピソードもある。このマルティノ、'80年代に「脳動脈瘤」に倒れ手術を受けているのだが、手術後、意識が戻った時にはほとんどの記憶を失っており、なんと自分がジャズ・ギタリストであったことすら忘れていたという。そして、その後リハビリが凄い!なんと自らのリーダー・アルバム、参加アルバムを'60年代にまで遡って聴き、合わせて演奏し、勘を取り戻していったというのだ。'87年ごろ一時活動するが、完全に復活したのは実に'94年のこと(ちょっと自信ナシ。詳しい情報お持ちの方は御一報を)。世の中に「お涙頂戴」の難病話数々あれど、ここまで強靱な意志を感じさせるような、尊厳に満ちた話はちょっとない。このサウンドが誰にも真似出来ない理由は、そんな意志の表出にあるのかもしれませんね。とにかく、凄い話である。
 マルティノのこのエソードはアメリカにある彼のオフィシャルホームページにさらに詳しく書いてあります。バイオグラフィページを開くと真っ先に飛び込んでくる言葉「彼が再び演奏出来るとは、誰もが決して思わなかった」で、思わず、ホロっと来てしまった....。

 しかしこのアルバム、いかにもジャズっぽいエピソードに満ち溢れているなぁ。テナーで参加のボブ・ケンモツ氏も大変な人物。広島県出身の祖父・劔持氏がアメリカに移住したのが今を去ること数十年前、三世にあたるボブ氏はカリフォルニアはサンノゼ大学のジャズ・バンドで大活躍ののち実力派テナー奏者としてプロ活動を開始しました。マルティーノの超人的ギター・プレイについ耳を奪われますが、同じ速さで、ユニゾンで吹いているボブのテナーも同様に凄いのだ!
 ちなみに彼は'94年から'97年まで、日米両政府による芸術交換制度で来日。日本のプレイヤーにも多大な影響を与えていました。昨年12月の「さよならライヴ」には私も駆けつけましたが、終了後のひとけのない新宿ピット・インでボブ、Mak's Web Siteの大嶽君、そして定成の3人でしばし語り合い、固い握手を交わしたことは本当に良い思い出です。
 なんか大変な話が続いてしまいましたが、サウンドの方はきわめて聴きやすく、快適。通勤、通学途中で楽しめる、貴重な「朝聴いて気持ちいいジャズ」でもあります。「すごくマジメでちょっと暗いくらいの人の方が、逆にこういう明るいサウンド創れるんだよ。暗い人の明るいサウンド、いいよね!」という友人の発言もアリ。なるほどねぇ、軽い人間にはこの洒脱さは出せないかもしれないなぁ。
 いや、まあ、なんというか、こんな深いエピソードがゴロゴロ転がっているのも、ジャズという世界の不思議のひとつ。コイツにハマリ始めると、もうジャズ地獄9丁目のハズレまで来てますよ。







 ジャズはバクハツだぁ〜!
 いきなりフリー・ジャズから聴きたい!


気分その11 


 初心者が、いきなり、フリー・ジャズ。それもまた結構!冒頭でも書いた通り、どしゃめしゃぴぎゃぁのフリーを聴いて「これこそ俺の待ち望んでいた『ジャズ』だぜ!」と思う人だっているかもしれない。その後、フリー一筋数十年となるかもしれない。ジャズとはかように多様で自由なもの、なのだ!

 そうは言っても、あまりに「スバラシイ」のを聴いてしまうと、脳ミソが飛び散ってしまうので、まずはこのへんはいかがでしょう。アーチー・シェップ(ts)の『アッティカ・ブルース』('72)はフリーの名盤であるとともに、ブラック・ミュージックの一大パノラマでもあります。


"ATTICA BLUES"
Archie Shepp
(MVCI-23038 Victor)


 とにかく多様。グイグイのグルーヴ・ベース、攻撃的なブラス・セクション、シャウトしまくりのヴォーカルというタイトル・チューンは、さながらハード・コア・ソウルといった趣き。7歳の少女をヴォーカルに迎えた「クワイエット・ドーン」はビョークを思わせる前衛ぶりです。そして名曲「ブルース・フォー・ブラザー・ジョージ・ジャクソン」、これを超えるグルーヴィーなジャズを私は聴いた事がありません。

 ここでは詳しくは触れませんが、シェップの音楽はアメリカにおける黒人の精神的・社会的活動−ブラック・ナショナリズム−と深く結びついています。このアルバムを聴きながら、近代の黒人史などを研究してみるのも一興でしょう。このアルバムで多少壊れたサウンドに馴れたなら、シェップの他の作品やオーネット・コールマン(as)、アルバード・アイラー(ts)、セシル・テイラー(p)そしてファラオ・サンダース(ts、イチオシ!)などの作品にも挑戦してみましょう。騒音が、やがて快感に変わるはずです。


 さらにフリーでもう一枚。最後の最後に日本人の登場です。ピアニスト山下洋輔は世界的に有名な邦人ジャズ・マンであり、しかも、そのジャンルがフリーだってのが、なんか、嬉しいじゃないですか。日本人もなかなかガンバッテるのだ!(山下、TVCMに出ていましたね!ダイハツのRV「ムーヴ」のCMではちゃめちゃなピアノを弾いていたヒゲでハゲで吊り眼のオヤヂです。気持ち悪がらないように、あれで、ちゃんと音大出身である)。
 偶然、家が近所だった(?!)という事情もあり、山下のピアノは何回となく観ていますが、ベストは'95年、地元・葉山のジャズ・フェスティヴァルかな。車椅子のドラマー、富樫雅彦とのデュオだったのですが、いやー、鬼気せまるものがありましたね。一応曲はどれも有名なスタンダードなんですが、テーマが終わると鍵盤に対する執拗な攻撃が開始され、ゲンコで、ヒジで破壊的な旋律が奏でられる。ところが!これが、立派な「音楽」になっているんです。メロディーも、リズムも、コードも、しっかり感じる。ありゃフリー・ジャズの魔術ですよ。



"KURUDISH DANCE"
山下洋輔
(PCCJ-1135 Polydor)


"SAKURA LIVE"
山下洋輔
(POCJ-1075 Polydor)


 そんな山下の世界を覗くには、最近大活躍のニューヨーク・トリオ+1で録られた『クルディッシュ・ダンス』('92)あたりがよろしいのでは?とても聴きやすいドシャメシャです。彼の特徴はメロディーやリズムにとても日本的なエッセンスが含まれていること。五七五のリズムで作られた曲や、日本の童謡をモチーフしたナンバーなどもあり、そのへんは'91年の『サクラ・ライヴ』で聴く事が出来ます。もちろん単なる「フジヤマ・ゲイシャ」的な悪趣味なジャポネスクではありませんよ!しっかりとジャズ的に破壊し、ジャズ的に再構築しています。これこそ山下の天才さでしょう。ちなみにTVでお馴染みのヒゲでハゲで吊り眼のサックス奏者、坂田明はかつて山下トリオの一員でした。え?どっちも「ヒゲでハゲで吊り眼」だって?じゃぁ「メガネ」で見分けましょう。メガネが山下、目が点でいつもミジンコの話をしているなのが坂田です(怪しまないように。あれで、ちゃんと水産学部出身である)。

 あと、山下の名エッセイは有名ですね。アルバムは数枚しか持っていない私も、エッセイは全て揃えています。出張のお供です。新幹線の中で山下を読みながらニヤニヤしている金縁メガネのサラリーマンがいたら、それは私です。山下の本を開けば、いつでもどこでも、頭の中でフリー・セッションが始まるのだ、ってちょっとアブナイ人みたいでしょうか?ううう、フリーの電波が....。







■ お疲れさまでした。これで1年、ジャズ浸りの日々?

 さて、全11気分、23枚、いかがだったでしょうか?これでもまだ「なんか、ピンと来るの、ナイ」という方はサダナリあてにメールを下さい。個別に「処方」致しましょう!
 前回のジャズ史と今回のお薦めアルバムで、かなりの文章量になったんじゃないかな。ついついつられて読んでしまったあなた、もう、後戻りは出来ませんよ。ジャズ地獄の住民票がそろそろポストに届いているハズです。ふっふっふ。
 ま、マジな話、月2枚ずつトライしても約1年かかります。その間に雑誌とかにも手を伸ばすでしょう、ジャズ・クラブにも行ってしまうでしょう。CDの解説を読んで、ここに紹介した以外のアルバムも買ってしまうでしょうし、中には楽器など始めてしまう人もいるかもしれません。そんな、みなさんの「ジャズ生活」を、思いっきり応援します。可能な限りお手伝いもします。分からないことや困ったことがあればご遠慮なくメールを下さい。そしてみなさんの「ジャズ生活」のご報告なども是非お寄せ下さい。ここに紹介されているCDを買ったよ!なんてのが貰えたら最高です。感想を聴きたいなぁ。楽しみにしていますよ!ふぅ、今回は、特に、疲れた....。


■ さてちょっとお知らせ、新機軸

 会社の帰りに本屋に寄って、どひゃーっと驚いた!雑誌「スウィング・ジャーナル」の別冊として「ジャンル別ジャズ・カルチャー講座」とかいう本が出たんですが、これが、私がこのページでやろうと思ったことを全てやってくれている!困った!どーすりゃいいんだ、俺は!(表紙とか、ここには載せません。悔しいから買っていないのだ)。

 しかし私はアセラない。実は今回の大作「最初の1枚」で座学は終わりにしようと思っていたんです。これからちょっと実践編。書を捨て、街に出ます。次回予告をご覧下さい!






■次回予告■

「横浜JAZZプロムナード '97」完全レポート!

 いよいよ「はじめてのJAZZ」が街に出ます!次回は第五回を迎えた「横浜JAZZプロムナード '97」の完全レポートをお送りします。10/10、11の両日、約30会場で百数十ものセッションが繰り広げられる日本最大のジャズ・フェスティバルです。昨年は10セッション数十名を観ましたが、さて、今年は何組観られるか。レポーターは不肖サダナリ+ジャズ仲間、乞うご期待!!

 以降もちょいと行動的な企画を計画中。今はヒミツなのだ。



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